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香港と日本のプログラミング教育の特徴の違いとは?高須正和さんにインタビュー

日本ではもうすぐ義務教育でのプログラミング学習の必修化が始まります。そこで今回は、香港のプログラミング教育について詳しい高須正和さんにお聞きし、日本の教育との比較をしていきたいと思います。

高須正和さん Twitter

アジアのMaker Faireに、世界でいちばん多く参加している。日本と世界のMakerムーブメントをつなげることに関心があり、日本のDIYカルチャーを海外に伝える『ニコ技輸出プロジェクト』や『ニコ技深圳観察会』の発起人。MakerFaire 深圳(中国)、MakerFaire シンガポールの運営メンバー。

香港のプログラミング教育の特徴

香港の面白いところは、香港の親御さん達が香港という国をあまり信じていない、ということですね。

子供たちが大人になったときに、今のままの香港がそのままあると、考えている人はほとんどいなくて、世界的にも変化の大きい中で、今の時代と未来の子どもたちが生きる時代は別物だと考えています。

だから、香港の親たちは、子どもに、世界のどこに行っても自分の力でお金を稼いで、食べていけるようになって欲しいと考えています。日本、中国には、あまりそういう感覚はないですね。日本語や中国語といった言葉が未来なくなるだとか、日本や中国という国の枠組みそのものが無くなってしまうかもしれないという危機感は、香港に比べると薄いです。

香港ではこれからの時代を生き抜く上で、子供に仕事を作れる人間になって欲しいと考えています。過酷な受験戦争で有名な香港は、それに加えてアントレプレナー教育の圧力が高い、ということが特徴になってくるのだと思いますね。

具体的にどのような教育を受けているのか

英語や数学といった、国際的に必要とされているスキルに関しては、彼らは普通に高い水準で身に付けています。それに加えてSTEM教育と呼ばれていている、自分で解くべき問題を見つけて解決する能力を育てる教育に関心が集まっています。

AmazonやGoogleやFacebookやアリババがやっているように、これからの会社ではどこでもプログラミングを使って価値のある何かを作る、社会の問題を解決することが仕事になっています。なので、プログラミングを学んで、それを使って、未知の新しい問題に取り組む。自分が解くべき問題を見つけ、解き方を考え、それを仕事にしていく。entrepreneur教育、つまりは社長を作る教育ですね。

こういった教育は、香港やシンガポールで既に世界有数のレベルで盛り上がりを見せていると思います。

どのように香港の子供たちはプログラミング教育やアントレプレナー教育を受けているのか

もちろん教材みたいな基礎的な部分は年々進化してきていてそれを有効に使っています。例えば、イギリスで作られたマイクロビットは教科書も含めて質が高い、なんて話はよく耳にしますね。ただ、私の個人的な意見としては、教材がなんであろうと、教えて身につくことは、ちゃんとやれば出来るようになるんですよ。結局はどんな教材を使ったとしても、やるかやらないか。STEM教育のように、決まった教科書でなくプロジェクトを進めながら学んでいく教育は、教材の良し悪しに加えてプロジェクトの進め方やゴール設定が重要になります。

香港の授業で面白いのが、先生が予算確保して、コンテストをやっているんですよ。子供に自由にプロダクトを作らせて、それに応じて先生が投資家みたいに予算を与える。例えば子供がこういうアイデアでこういう機械を作りたいので、先生モーターを買って下さいみたいな。もちろんスキルそのものは最初に教えるけど、その学んだ成果を使って結果を出してください、たとえばチームを組んでビジネスコンテストに持ち込む試作機をつくろうということを要求する。

そのような教育を社会のシステムに取りこみはじめたのが香港の特徴で、日本にはあまりこういう部分はないですね。日本でもコンテストのような機会はありますが、大半は学校の通常の時間内ではなくアフタースクール中心です。ですから、香港ではコミットの量が違ってきます。ビジネスでなくても、絵を描くでも、音楽でもなんでもいい。だけど、子供が自分でやろうと考え、どうやるかを自分で考えたことを実現させようとする。

加えてそれがしっかりお金に繋がることを大切にします。親ももちろんその視点で見ていて、子供が、自分で自分の仕事を創り出してそれで食べていける方向性に持っていこうとしているのでしょうね。

香港の教育は目的意識が明確

いわゆるプロジェクトベースドラーニングというものは、もちろん基本的なスキルも教わりますが、その先に焦点があります。スキルを身に着けた上で問題解決の方法、何の問題を解決するかという課題設定に重点を置くことが大切だと思います。

それをどのようにして学ぶかと言えば、やはりさまざまなプロジェクトを何でもこなしていく実践です。スポーツも、まず基礎練習をいっぱいやった上で、試合をして伸びていく。ビジコンに参加する機会をたくさん設けて、トライアンドエラーを繰り返し、なぜ今回は勝ち、今回は負けたのかしっかり原因を考察する。

そうしたトライアルアンドエラーの機会が多いことが、子どもたちの成長に繋がっていると思います。その点、日本はスキルを使う方法のみに留まっていて、課題や目標設定にまで意識が回っていない印象がありますね。例えばシンガポールでは、高校の科目にロボティクスが入るのですが、これもスキルが目的ではありません。ロボティクスを一通り、倣ったから、なにかスタートアップできるでしょ、自分で課題を設定してね、という方向性に繋げていく。

今の時代、スタートアップのアントレプレナーでプログラミング書けない方が珍しい。ザッカーバーグにしてもgoogleの創設者の2人にしても、みなプログラミングができます。手を動かして、モノを作れる人じゃないとアントレプレナーになれない、そういう意識が香港のプログラミング教育にはあるのかもしれませんね。