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楽しいからプログラミングを学ぶ!Scratchで楽しく学ぶ アート&サイエンスの著者石原淳也さんにインタビュー

Scratchで楽しく学ぶ アート&サイエンスの著者石原淳也さんにインタビュー

つくる社代表の石原淳也さんは、小中学生にプログラミングを教えるOtOMO(プログラミングサークル)や、CoderDojoにも携わっておられます。さらには様々な教材のシェアプラットフォームの製作・まちクエスト(スマホの位置情報を使ったクイズラリーサービス・http://machique.st)の開発など、多岐にわたるご活躍をされています。

今回は石原さんに、昨年出版された著書「Scratchで楽しく学ぶ アート&サイエンス」に関して、またご自身で展開されているプログラミング教育、学校でのプログラミング教育について、お話を伺いました。

プログラミング教育活動に関わることについて

―どういった思いのもと、子どもたちにプログラミング教育をされていますか?

初めの頃は、みんなプログラマーになればいいのに、と思いながら、プログラミングを教えていました。でも、そう思っていたのは最初だけでしたね。

活動を通して色んな子どもたちを見ていくと、子どもたちにはそれぞれ向き不向きもあれば、プログラミングに興味を持つかどうかもまちまちので、別にみんながプログラマーにならなくたっていいと思うようになりました。

とはいえ、プログラミングは面白いものだし、プログラミングを書いてモノづくりができたり、仕事の効率化を図ることもできますし、プログラマーにならない人でも知っておいて損はないんじゃないか、という思いのもと活動しています。

著書:Scratchで楽しく学ぶアート&サイエンスについて

―去年出版された本についてお聞きしたいのですが、初級者向けではなく、中級者向けの本にされた理由は何かありますか?

スクラッチの人気がだんだん上がってきて、子ども向けの本とかもたくさん出てきたんですけど、その大半は初心者向けのものでした。なので、僕は天の邪鬼というか、みんなと同じものを書いても仕方ないなと思って、まだ世の中にあまり出ていない、中級者向け、大人向けの本にしました。

―このタイミングでこの本を書こうと思った理由がもしあれば、教えてください。

最近、学校教育の中でプログラミングが教えられるということで、親御さんの中には全然プログラミングがわからないから、プログラミングを教えてくれる塾などに子どもを通わせたいという人も出てきています。いわば、プログラミングを習い事やお勉強として捉える風潮も出てきています。

ですが、僕はOtOMO(プログラミングサークル)を始めた時も、その後CoderDojoの立ち上げに関わった時もそうですけど、初めから一貫して、「プログラミングは楽しいから、みんなやればいいよ」というような気楽な姿勢でプログラミングを教えてきています。勉強ということになったら、苦しくても無理してやらなきゃいけない、ということになりますが、僕としては、別に苦しかったら全然やらなくてもいいよ、というスタンスなんですよ(笑)。

そういう僕らからすると、最近のプログラミング教育は、ちょっとへんな流れになってきているように感じています。なので、「いやそうじゃないんだよ」と言いたかったというか、世の中の風潮に対する、一つのカウンターとして、この本を書いたような所があります。

日本のScratch界の第一人者で監修をお願いした阿部先生が解説に書かれているんですが、「本書で取り上げているさまざまなプログラム例は、それをやったからと言って、直ちに何かの役に立つというものではありません。これで、資格が得られたり、お金がもらえたりするわけでもありません。」と。この部分は、けっこう端的に僕たちの考えをまとめてくれていますね。いわば、この本は学校の勉強には全く役に立ちませんよ、という本ですね(笑)。

そういう考えって、阿部先生とか石原先生は当初からずっと言い続けておられますよね。

言い続けてきたというよりは、自然とそういう考え方を持ち続けてきたという感じですね。
ただ、最近は、そうじゃない考え方が出てきているじゃないですか。そうなると、今までよりも強く主張しないといけないのかな、と思ってますね。

今までは、口に出して言わなくたって、例えばOtOMOに来てくれる人たちとか、初期のCoderDojoに参加してくれた人たちは、自然とそういうものだよねって感じで、僕たちの考えを理解してくれていたんですよ。

でも、最近そうじゃないものも出てきて、世の中の流れとしてはそちらの方が主流になりつつある中で、僕らとしてはそれはちょっと違うんじゃないかと、対抗する必要が出てきたのかなと思っています。

―役に立つからやるというよりは、楽しいからやる、という感じなんですね。

そうですね。中には、親御さんに無理やり連れてこられて、子どもがつまらなそうにプログラミングをしていることもあるんですよ。隣から、「あなたそれ間違ってるでしょ」とか言われてたりしているわけです。そういうのを見たりすると、それはちょっと違うよなぁと。そのせいで、プログラミングがつまらないって子どもが思っちゃったら、もったいないなぁと。

OtOMOやCoderDojoでは、そういうことにならないように、あえて親御さんには後ろに控えていてくださいとお願いすることもありますね。子どもたちが自由に伸び伸びと学習できるよう心がけています。

近年のプログラミング教育について感じること

―実用重視になりがちな近年のプログラミング教育に、一石を投じるような活動なんですね。プログラミング教育について、石原さんが何か期待されていることはありますか?

僕は、プログラミングの考え方の中に、従来までの学校のやり方を大きく変える可能性が秘められていると思っています。

これまでの教育って、テストで生徒同士を競わせるのが主で、みんなで協力させようとはしないじゃないですか。人の答案を見て自分の答案書いたらカンニングになるじゃないですか。

だけど、実際の仕事、特にエンジニアやプログラマーの仕事の場合は、いかにお互いに協力しあうかがカギになります。色んなライブラリに依存して、ソフトウェアやオープンソースも活用して、バグを修正したり新しい機能を協調して作っていくのが当たり前の文化です。そうしたインターネットの文化って、とても革新的だなと思っています。そして、そういう考え方が、次の時代の流れであり、あるべき方向なのかなと思っています。

学校の他の科目のやり方をいきなり変えるのは難しいかもしれないけど、プログラミングはこれから始まる新しい分野なので、それにあった教育の方法も今までにない新しい方法として取り入れられたらいいなと思っています。そして、プログラミングの新たな考え方が、少しずつ、他の科目/分野の教育にも良い影響を与えていってくれればいいなと思っています。

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